2012年4月21日土曜日

砥粒の種類


2009年8月1日更新

研削ホイール(ダイヤモンドホイールやCBNホイール)に使われる砥粒は、ダイヤモンドかCBNのどちらかとなりますが、砥石に使われる砥粒となるともう少し種類があります。酸化アルミニウムAl2O3を主体とするアルミナ系の砥粒(A砥粒)、炭化ケイ素SiCを主体とする(C砥粒)が知られています。

ダイヤモンドやCBNを使った砥石は超砥粒ホイールとも呼ばれ、前述のアルミナや炭化ケイ素を使ったものは一般砥石と呼ばれています。ダイヤモンドやCBNに比べて一般砥石、研削砥石は価格が安い半面、超砥粒ではないと作業が思うように進まない加工もあります。ここでは、ダイヤモンド砥石やcbn砥石に使われる砥粒についてご紹介いたします。

砥粒は、加工物を削り取る「刃」に相当する重要な部分です。研削ホイールの中でも、超砥粒ホイールに使われる砥粒は、合成ダイヤモンドとCBNが主体になります。どの砥粒を選択するのか、砥粒を検討する際に重要となるのが次の3つの性質です。

  • 1. 破砕性(⇔靱性)
  • 2. 硬度
  • 3. 熱的安定性(化学的安定性)

1. 破砕性

砥粒を選択する際の最も重要な要素ともいえる「破砕性」はダイヤモンドやcbnの砕けやすさを表しています。切れ味は「砕けやすい」砥粒ほどよくなります。


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破砕性は、砥粒の砕けやすさを示す指標のひとつですが、靱性(衝撃強度)も砥粒の選択には重要な要素となります。破砕性の正反対の意味が靱性というわけではないのですが、破砕性のよい砥粒は、あまり靭性に優れているとは表現しないです。 破砕しやすい砥粒ほど、研削途中で砥粒が破砕し、鋭い刃に生え変わっていきます。 自生作用(古い砥粒が脱落したり、削れたりして、切れ味の鋭い砥粒に入れ替わっていく現象)が活発で切れ味は鋭くなりますが、 破砕していくため寿命は短くなります。単結晶タイプのダイヤモンド、多結晶タイプのダイヤモンドでも破砕性は異なってきます。

切り屑が非常に細かい超硬などに対しては、微小破砕を起こすタイプのものが効果を発揮します。

2. 硬度

下図のとおり、常温ではダイヤモンドが最も硬い砥粒となります。次に硬い砥粒がCBNですが、こちらはダイヤモンドと比較して高温下でも硬度の低下が少ない砥粒です。ダイヤモンドの場合、 600℃を超えると酸化による黒鉛化がはじまり、800℃をこえると炭化しはじめ、CBNよりも硬度が低下します。超砥粒に使われるダイヤモンドとCBNは、砥粒の中でも特に抜きん出ていることがわかります。ただ、加工物の硬度よりも砥粒の硬度が低いからといって切れないということにはなりません。


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3. 熱的安定性(科学的安定性)

ダイヤモンドはぬれ性はなく、化学反応を起こしづらい砥粒ですが、一方で熱に弱く、鉄に対しては炭素(C)を奪われるため使うことができません(※一部鉄を含有するものにも使える例はあります)。また高温下で炭素(C)と反応する被削材として、タングステン、クロム、モリブデンなどがあります。こうした被削材の場合、条件によってホイールの損耗量は多くなります。

一方、CBN砥粒の場合は、高温下では表面が酸化し、酸化ホウ素(B203)の薄い膜に覆われるため、 1300℃までは熱的に安定しているとされます。研削条件や、研削対象(被削材、ワーク)により最適な砥粒は異なってきます。砥粒の選択には形状、破砕性、硬度、耐摩耗性、化学的安定性に留意する必要があります。

ダイヤモンドの種類

ダイヤモンドホイールの砥粒には大きく分けて、天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドがあります。 このうち、工業用途で一般的なものが、合成ダイヤモンドで、この中でも研削ホイールに用いられるものは「合成ダイヤモンド ( SD)」と「金属被覆合成ダイヤモンド(SDC)」の二つに分類できます。


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SDCは、合成ダイヤモンドの表面を金属でコーティングした砥粒で、レジンボンドでよく使われる砥粒です。 NiやCu、Tiなどの金属で砥粒表面をコーティングすることで、ボンドと砥粒の密着性を向上させたり、研削時に発生する熱を効果的に逃がしたりすることができます。ダイヤモンドにはぬれ性がなく、他の物質と反応を起こしづらいため使い勝手がよいですが、反面、砥石を作るうえで重要となるボンドとの密着力の確保は、機械的なグリップに頼らざるを得ません。したがって、最適な砥石を選ぶ際には、ボンドと砥粒の密着力も非常に重要な要素となります。後述しますが、砥粒の表面をコーティングしたタイプのSDCやCBNCと表記されるものは、ボンドが砥粒をつかみやすくし、保持力を高める効果を持ちます。

ダイヤモンド砥粒は研削熱によるダメージが大きいため、周速度がある領域を超えると急激に研削比(寿命)が低下します。 ダイヤモンドは大気では概ね600℃を超えると炭化がはじまり、軟化します。 また、ダイヤモンドは方向によって硬さが変わり、安易に削れる方向と削りにくい方向があります。合成ダイヤモンドの中でも、性質・品質の異なるタイプのものが多数あります。 合成ダイヤモンドは主として「形状」と中に含まれる不純物「インクルージョン」により分けられます。


【低衝撃強度ダイヤモンド砥粒】

破砕性に富んでいます。砥粒の形状も比較的尖った箇所が多く、ボンドによくひっかかるため保持力が期待できます。表面に金属をコーティングしたSDCタイプのものでは、さらに保持力が高くなっている反面、破砕性が若干低下します。合成ダイヤモンドの破砕のメカニズムは、内部のインクルージョン(不純物)が研削熱により膨張し、内側から破裂するように破壊するというものです。これらインクルージョンは、合成ダイヤモンドを作る際の触媒とも深い関係があります。

【中衝撃強度ダイヤモンド砥粒】

低衝撃強度ダイヤモンドに比べ、砥粒表面の尖った箇所は若干少なく、破砕性も低いダイヤモンドです。 ボンドとの結合力も尖った箇所が少ないため、少し弱くなります。保持強度の強いボンドに向いた砥粒です。

【高衝撃強度ダイヤモンド砥粒】

耐衝撃性にとんだ強度の強い砥粒で、硬脆材料の研削に向いています。ただ破砕性が悪く、自生作用が不活発なため軽研削には向かないとされます。特に砥粒の強度が必要な加工物を研削する場合に検討されます。


CBN(立方晶窒化硼素)

天然には存在しない合成物質で、六方相窒化硼素(h-BN)に高温・高圧をかけて作られます。 破砕の仕方や結晶の形にバリエーションがあり、硬度はダイヤモンドよりは劣りますが、反面、熱に対して耐性があり、高温下での硬さはCBNのほうが優れています。特定条件下では1300℃まで耐熱安定性を持ちます。ダイヤモンドと比較すると、CBN砥粒は高温強度が高く、研削熱による劣化が生じにくいため、 周速度を上げるほど砥粒1個にかかる負担が小さくなり、研削抵抗は減少し、研削比(寿命)は高くなる傾向があります。

CBNも1000℃を超えると、酸化がはじまりますが、酸化ホウ素の膜がCBN表面に形成され、これが保護層として機能するため、これ以上の熱による損傷は受けにくいです。

適度なへき開性があるため、砥粒先端で微小破砕を起こし、鋭い切れ刃を維持します。ダイヤモンドの場合と同様に、破砕性に富んだものから、靭性に富んだものまで幅広いグレードと種類があります。ちなみに、価格はダイヤモンドよりも若干割高になります。



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